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「量から質」という考え方

齋藤孝/著『原稿用紙十枚を書く力』を読みました

 「書く力がない人は、たいてい読む力もない」とありますが、原稿用紙10枚をすらすら書けるようになるにはかなりの訓練が必要だと思います。この本の中で「書く力」は「考える力」と書かれています。私がブログを書き始めた理由の一つは、「考える力を養いたいから」というのもあります。それゆえ、以前購入していたこの本を引っ張り出してもう一度読んでみる気になりました。この本は「書く力」だけでなく、さまざまなことに共通する「うまくこなしてものにする」エッセンスがつまっています。なぜなら、「書く力」も他の物事と同様、量をこなして伸ばしていく能力だからです。

 齋藤孝先生の本は以前数冊読んだことがありました。テレビや雑誌などでお見かけするいつも柔らかい優しい笑顔であふれる齋藤孝先生とは裏腹に、先生の著書の内容は意外にダイレクトで辛辣です。

「書くことはスポーツ」

 つまり、質より圧倒的な量をこなすこと。量をこなして質を上げていくという考え方ですね。これは、スポーツ以外の何にでも当てはまることです。学習もそうですし、何か上達したいなら1万時間やるべきとマルコム・グラッドウェルも著書『天才!成功する人々の法則』の中で述べています。いきなり10枚書くというのができなくても、毎日目標を決めて書き続けるということが推奨されています。

「引用力」

 「引用力」を上げるには、書くという前提で読み、最後まで読む必要もないのだと書かれています。そして久しぶりに見た「3色ボールペン」の登場です。懐かしい。昔3色ボールペンの本を出されていましたね。

「赤は重要な部分、青はまあまあ重要な部分、緑は個人的にいいと思った部分」

ロザンの宇治原さんや7回読みの山口真由さんはマーカー否定派ですけど、マーカーを一切引かない読み方というのは、おそらくかなり読み慣れた人に適しているのだと思います。さらに、音読によって文章の生命力がわかると書かれています。ご自身の著書を彷彿とさせる「声に出して読むこと」。こうして読んでいくと、どの著書にも根底に流れる内容に一貫性があり、主張が繋がってきますね。

「3つのキーコンセプトをつなぐ」

 原稿用紙2、3枚ならレジュメの作成など準備はいりませんが、10枚以上となるとレジュメを作って構成をしっかり組み立てていかなければなりません。「出来るだけ離れて重ならない3つのキーコンセプトをどうつないでいくかで、その人の能力が決まる」「その3つをつなぐラインが脳みそをつなぐラインであり、その人の個性である」のだと。

 しかし、あとがきで「質は高いけど、短い文章しか書けない人」よりも「量をこなせる人」を評価されているのは、それだけの量をこなし、実際に質の高い文章を書いていらしゃるからこそ、そのように感じていらっしゃるのだと思いました。量をこなして質を上げるということは、思考として健全だと思います。文章を書く人にも、書かない人にもおすすめの本です。