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小学生にプラトン

かつて、読書感想文のお題に何気なく「プラトンとか読んじゃえば?」などと言ってポカンとされた話

 以前、個別指導塾で大抵高校生ぐらいの生徒さんと普通に大人が話すような会話をして英文法を説明したりしていた私ですが、春休みの生徒の入れ替わりの時期には、小学生を受け持つことがありました。読書感想文の宿題が残っているといわれたので、プラトンをお勧めしてなんだかポカンとされてしまった私のプレゼン能力の低さ。今回はこれを読んでくださっている方に、プラトンの本を読んでいただければと思ってこれを書いています。

 「プラトンなんか、読む気にならない」と大人でも思う人は多いのではないでしょうか。私もその一人で、かつてプラトンなど一生読むことはないと思っておりました。当然、プラトンが何を書いたかなんて全然興味がなかったですし、ソクラテスの弟子でしょうぐらいな知識しかありませんでした。ソクラテスなんて、あんなに有名なのに著作はひとつもなく、なぜ死ななければならなかったのかもよくわからず、ただ「無知の知」という言葉だけを世界史の教科書で覚えたという記憶しかありませんでした。しかし、これが読んでみると面白いんですよ。本を一冊も書かずにあんなに有名。じつは、プラトンがソクラテスのことを書いていたのです。対話篇といって、やや乱暴な言い方で説明すると、ソクラテスがいろんな人に議論をふっかけて論破するという(厳密に言えば、相手の意見のほころびを見つけて「行き詰まり(アポリア)」へと導く。忙しい現代人なら「代案出してから言ってください」と言うようなオチ)大変厄介な“哲学当たり屋おじさん”の話です。「そんなことしてるから殺されるんだよ」と思われるでしょうが、服毒で自ら命を絶ったとなっています。

 プラトンの有名な作品には『国家』というものがあり、これは「『正義』とは何か」がテーマとなっています。そして、『メノン』や『プロタゴラス』は「『徳(アレテー)』は教えられるか」ということがテーマになっています。

 プラトンを読むと「『善いこと』とは何か」という考えにいたります。「正義」もそうですし、「徳」もそうです。ちなみに「徳」というのは、一般的にいわれている「道徳」ではなく、人間の能力や技術のことを指すのですね。

 例えば、『メノン』で議論される『徳』は教えられるかという議論では、『徳』とは何か『徳』の本質について尋ねます。結局「善いもの」には違いないのだけど、実際のところよくわからない。よくわからないものを教えることができるのかという議論になります。ソクラテスの使えるフレーズ「わたしはひどく無知で、徳そのものがおよそいったい何であるかということさえ知らない」と。

 そこで、我々はメノンと一緒に『徳』とは何か、を考えるのです。で、結局『徳』は教えられるのか?という問いに対する結論は。

 「わたしはひどく無知で…」

  はい、死刑!

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