長沼毅/著『考えすぎる脳、楽をしたい遺伝子』(クロスメディア・パブリシング)を読みました
この本は、まえがきにある通り「脳に振り回されずに生きる方法」を科学的に書いた本です。人間の脳は、進化の過程で直立二足歩行をし、進化して知性を発達させて「楽をする」という動物としての体の欲求に背いてしまうというトラブルを抱えています。自分に向かないことをやっているケースと環境に合わないケースというのが、日々疲れている人にみられるということが書かれていました。本書では、そいういったことから解放される方法がいろいろと書かれていて面白くさらっと読めました。
わりと、脳が疲れているのは目の疲れと相関関係があるかもね
「脳から出ている神経の1/3は目につながっている」というのは、なんだか面白い話でした。目が疲れると、頭が疲れた気がしますね。動物はどちらかというと聴覚や嗅覚が優勢だったりしますもんね。うちの犬は、あまり視覚がすぐれていなくて、特に遠くに投げたおやつなんかは、近くの地面をにおいを嗅いで探し回るんですが、途中で諦めます。明らかに視覚は弱いと思いましたが嗅覚も、ちょっと怪しいです。かわいいから許す。
動物界では無理をしないで死ぬときは死ぬというまっとうな考え方
つまり、無理をしないで淡々と生きること。辛いときは、ストレスから逃れること。それは大事なことです。つらいことに向き合うにしても、その先にはいいことが待っていると。わかっていても、なかなかそんなに飄々と生きることはできませんが。「勝つまで負ける」とか「負けは負け、失敗は失敗と認めないと、同じことの繰り返しになります」という考え方は共感できます。動物もエサが取れなければ延々と同じ方法をバカみたいに繰り返して決してくじけないというのは、見習うべき。これは人間が忘れがちなことだと思います。
やる理由はある、やらない理由はない
耳が痛い(笑)。我々はやらない理由をいくつも並べますが、やる理由はひとつ。頑張るためには、周りの人の力を借りることを提案されていました。そして、選択するのは沢山の中からひとつを選ぶということのようですが、選択の本質は捨てることにあるということも述べられています。やってもやらなくても結果的には後悔するのだからやって後悔したほうがいい、と。わりと、社会とか集団については、淡々と「ただ人が集まっているだけの場」と書かれていて、若い頃はその集団に振り回されて一喜一憂することが多かったのですが、確かにその通りだなぁと思います。学校でいじめられている子供なんかも、ただ地域にたまたま住んでいただけの人が集まっているだけだから、合わせる必要もないし、そもそも学校は必要がなければそんなに毎日行かなくてもいいぐらいに思えてきます。
この本の著者は、脳科学者ではなく生物、生態学者なので、脳科学ではなく動物と人間という視点で書かれています。動物界で、動物ならこのように行動する。人間も、このように生きてはどうかということがいくつも書かれていて、その視点の面白さととにかく一歩引いた冷静な目で人間という動物を語っているところがよかったです。読みやすい。