授業中、ちっちゃい子を泣かしたことがあったなぁという話

 もう随分前の話です。私が塾講師になってまだ数ヶ月の頃、夏期講習に来た小学3年生ぐらいの、とても賢い、とてもしっかりした女の子に国語を教えたことがありました。まだ、テレビではいわゆる「おバカタレント」が人気で、時の首相が「未曾有」を「みぞうゆう」と読んだというのが話題になっていた平和な時代。宿題をしてこなかった生徒の反省文に、「宿題を忘れました。それは、テレビを観ていたからです。それにしても最近のテレビは面白い…」と綴っていたこともありました(それはそれで読み物としては面白かったので、塾長と一緒に彼の文章力を褒めて終わる結果になりましたが)。そんな頃、小学生の女の子を私は泣かしてしまうということをしでかしてしまいました。やっちまったなー。

私の誤解

 女の子は、その日ご機嫌で塾に来ていました。そして、いつも通りテキストを広げて一所懸命文章を読んでいました。答えを書いている間、隣の空手部の英語をみていたのですが、まだ中3で部活が終わったばかりで、ちょっと目を離すと適当に気を抜いてしまうので、厳しく言ったり大きな声を出したりしていたのでした。

 女の子が解き終わったので、サラサラっと目を通して、丸バツをつけ、間違った箇所はどのように間違っているのか、出題者の意図などを説明して(国語だったので)「ここはこのように読み解いてください」と言って、説明が終わってまた隣の男子生徒を、結構きつく注意したりしていたのです。すると、しばらくして突然授業が終わるか終わらないかぐらいの頃に、女の子が泣き出したのです。うーーん、小さい子は隣で厳しく叱ったりしたのでびっくりして泣いたのだと思いました。その塾は、小・中学生が多く、みんな比較的近所から通う補習塾だったのでちょっとお姉さんぐらいの小学生が寄ってきて、「大丈夫?どうしたの?」なんて聞いて慰めてくれていました。塾長さんも、新卒の優しい男性だったので、次の授業の間、女の子とお話をしてくれていました(本当にすまないねぇ)。「申し訳なかった。ちょっと横で叱りすぎた。でも、中3だしなぁ」なんて思っていましたが、彼女はそんなことで泣いていたのではなかったのだと後で聞かされることになりました。それは、意外な理由だったのです。

彼女が泣いていた理由

 単純に、悔しかったのです。彼女は、私が何かしたことに対して泣いていたのではありませんでした。学習塾のテキストは学校で使っている教材よりもレベルの高いものが多く、普段学校で解いている問題はきっとまだ小学3年生ぐらいだとよほどのことがない限りみんな満点をとれるような作りになっていたのだと思います。だから、初めて来た夏期講習で難しいテキストを解いて、「バツ、バツ、サンカク…」と、丸以外のものがテキストにつけられて、びっくりしたのと悔しかったのとで思わず涙が止まらなくなったようなのです。でも、さすがに指示語などの問題は、正確に把握しないといけませんからやはり採点を変えるわけにはいきません。しかしその翌日、彼女はまたご機嫌で塾に来て当たり前のように授業を受けていました。

できる子は負けん気が強い

 そういう子は、伸びます。たとえば普段は冗談ばかり言っていた高校生が、部活最後の試合で負けた日に、ほとんど口も利けないほどショックを受けて、とても悔しがっていたというのを思い出します。すごく頭の切れる生徒でした。何かあってすぐに自信を失って諦めてしまうより、悔しい思いを隠さずに表現し、同じ間違いを繰り返さないように努力できる粘り強い子が合格を勝ち取れるのだと思います。

 今日は、「粘り強く継続しつづけること」が書かれた記事をたまたま目にしたので、以前塾であったことを思い出して、「あの粘り強い子はどうしているのだろう」と思って、ブログに書いてみました。

粘り強く続けられることは本当に大事なんだ。

 

 

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