デュルケムの『自殺論』を易しい言葉で解説する

 デュルケムとは誰かといいますと、フランス第三共和政時代の社会学者のことです。デュルケムは『自殺論』で、その当時の社会問題になっていた自殺の問題に取り組んで、哲学から独立した学問として社会学という分野を学問領域として確立していきました。自殺の動機は人によって違いますが、デュルケムは統計をとって数値化し、自殺と社会の因果関係を客観的に分析したのです。そうして社会学的な視点と心理学、精神病理学的な視点とを区別しています。じゃ、デュルケムの『自殺論』はどういうものなのかを今日は書いていこうと思います。

『自殺論』はこういう本

 この本は、短いです。短いといっても本を読み慣れない人には短くもないかもしれませんが、この手の学術的な本にしては短い部類だと思います。この本の構成がどのようになっているかといいますと、

はじめに「自殺とは何か」ということを定義しています。

デュルケム的に、ざっくりいうと自殺とは「当人自身がした行為で結果的に死んで、しかも当人がその行為で結果的に死ぬんじゃないかと思っていた場合をすべて自殺」と定義しています。つまり、「これをやったら死ぬとわかっている行為をあえて自分でやって死んじゃった場合を自殺という」ということを言っています。

そして、本論を3つに分けて

1 「自殺の非社会的要因」

2 「自殺の社会的原因と社会的タイプ」

3 「社会現象一般としての自殺」

を分析しています。

1つ目。「非社会的要因」では、精神病的な状態、人種、遺伝、気候や季節などの環境要因などの社会的要因じゃないものは自殺と直接関係あるとはいえないことを言っています。

2つ目。「社会的原因と社会的タイプ」では自殺の類型を3つに分けています。

1「自己本位自殺」

2「集団本位的自殺」

3「アノミー的自殺」

「自己本位自殺」とは、社会が弱体化して個人主義がいきすぎた場合に増加する自殺のこと。例えば、プロテスタントはカトリックより社会の凝集性が低い、つまり拘束力のゆるい集団なので自殺率が高いという風に考えています。そして、自殺は女性より男性に多い。若年より老人に多い。農村より都市部に多い。既婚者より独身に多いということを実証しています。なるほど、これは現代の日本の統計データを見てもそのようになっています。プロテスタントとカトリックのデータは見てないけど。

次に、「自己本位自殺」に関して「宗教、家族、政治的な統合の強さに反比例して増減する」ということを言っています。

「集団本位的自殺」というのは自己犠牲や殉死のようなものを指します。近現代でいうと、軍人などですね。軍人の自殺率は一般市民より高いということ。

「アノミー的自殺」はアノミー状態で引き起こされた精神の不安定のために自殺することです。「アノミー」とは、社会による欲望の無規制状態。「法の不在」を意味するギリシャ後に由来する概念です。困窮状態はもちろん、繁栄している社会でも混乱期には道徳を与える社会が弱体化するから自殺が増加しやすいと考えています。デュルケムの統計によると好景気の時の方が不景気の時より自殺率が高くなるんですって。あとは、商工業者の方が農業従事者よりも自殺率が高い、と。

そして、最後に「社会現象一般としての自殺」では、自殺の増加抑止に同業組合制度と、男女平等参画などが自殺の緩和につながるということをいっています。

統計データを調べてみよう

 日本の自殺の統計は厚労省のサイトで見ることができます。日本で自殺が多かった時期を調べると、「戦後」「プラザ合意後」「バブル崩壊頃」いずれも社会の混乱期なんですね。やはり社会が混乱すると自殺する人が増加します。それから、年金受給者の自殺が近年増加傾向にあるという統計もあります。年金受給者ということは、高齢者ということになりますね。でも、日本はもともと自殺者が多いですから、そういう点でアノミー状態が常態化しているんでしょう。

 若者の自殺が問題になっていますけど、14歳以下だと死因の第一位はガンです。それに、若者の自殺が割合として多いのは、「若者は病気で死ぬことが高齢者に比べれば少ない」ということもありますね。

 社会の自由研究は、図書館の資料やネット上で公開されている統計資料に基づいて客観的な視点で書いていきましょう。社会問題に関する本を読んで自分が感じたことを書けばそのまま読書感想文としても使えます。夏休みの最後に残りがちな自由研究や読書感想文はもう、書けているのでしょうかね。では、今日はこの辺で。

 

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